ネット右翼とネット左翼

  • ネット右翼ネット左翼の対立は、政治的立場の対立である以上に、思考様式の対立である。簡単に定式化するなら、ネット右翼とは、「主体」に着目して議論する人たちであり、ネット左翼とは、「理念」に着目して議論する人たちである。
  • ネット右翼の関心は、もっぱら「誰が誰を」である。ここで「誰」に入るのは、日本、中国、韓国といった国家であったり、朝日、読売、産経、毎日といった新聞社であったり、自民党民主党社民党といった政党であったり、あるいは麻生太郎古賀誠小沢一郎といった個々の政治家であったりする。ともかく世の中には「敵」と「味方」がいて、「あいつはどちらの陣営に付いているのか」が真に切実な唯一の問題なのである。
  • 他方、ネット左翼の関心は、「平和」「人権」「平等」「福祉」「正義」といった抽象理念である。社会のさまざまな政治的出来事の当否は、自己が奉じる抽象理念に適合するかどうかを基準に判断される。自己が奉じる抽象理念の重要性を他人に知らしめるのが彼らの言論活動の目標である。
  • ネット左翼の側からすると、ネット右翼は、抽象理念の操作能力に欠けた論理弱者に見える。彼らが好んで使う「反日」とか「媚中」といった非一般的な熟語は、救いがたく無内容で、何事も党派的にしか捉えることのできない彼らの単純思考ぶりを象徴するもののように思える。
  • 他方、ネット右翼の側からすると、ネット左翼は、自己の党派性を抽象理念のベールに隠蔽した卑怯者に思える。あるいは、社会の現実よりも自己の奉じる抽象理念を優先する言霊信仰者に思える。